【ネタバレ】ニューダンガンロンパV3考察

ニューダンガンロンパV3を今更やったので考察します。

【ネタバレ】王馬小吉についての考察

王馬小吉のことを四章、五章中心に考察したいと思います。
モノクマに提案したクロ同着のルールと最原へのアプローチを考えると、
彼の計画が色々と失敗していたのではないかな?と思います。

 

■そもそも、王馬は……


DICEという、人を殺さない、笑える愉快な犯罪をする少人数の秘密結社の総統です。
少なくとも二章からはそういう人間のはず。
なぜなら、モノクマーズパッドの動機ビデオを見て、
その記憶を思い出しているからです。(二章の東条と同じ状態)

だから彼は、ほかの人の死にたくないからコロシアイが嫌だ、という以上に、
自分の信念から外れた。『人が死ぬ』『笑えない』コロシアイに嫌悪感を抱いていたと思われます。

 

■王馬とほかの参加者の関係


大抵の参加者(というか全員?)は王馬のことを嘘ばかりつき、和を乱す、厄介な存在として見ています。
王馬としても、立ち回り上、そう見られることを望んでいたでしょう。

しかし、王馬には気に入っている参加者と嫌っている参加者がいたと思われます。


まず、気に入っていた参加者ですが、
・ゴン太
・入間
の二人でしょう。


そのほかにもどちらかと言えば気に入っていたであろう参加者はいそうですが、特にこの二人がお気に入りだったと思われます。

 

・ゴン太
彼は三章で生徒会問題が起きているとき以外は大体ゴン太と一緒にいました。
周りの人間は王馬が御しやすいゴン太を従えていると感じていたようですが、それは違うと思います。

何故なら、彼だけは最初から、ゴン太の言っていた
「中庭の『いは うま』の落書き」と
「勘違いかも知れない小さな虫」
を信じていたからです。

ほかの参加者はゴン太の気のせいと片付けて、まともに取り合いませんでしたが、彼だけは、
・後々の伏線に利用できるかもと落書きに文字を書き足し、
・入間に小さな虫を吸い込む機械を作るよう命じていました。

王馬は「バカだなーゴン太は」と言いつつ、ほかの誰よりもゴン太の発言を信用していたのです。

 

・入間
王馬が彼女を気に入っていた根拠は数々の発明品を作ってもらっていたことです。
この関係は王馬からの一方的な好意ではなく、相互的な信頼であったと思われます。

入間は一章で使い捨てカメラの改造を赤松と最原に頼まれたとき、
二人が土下座したところで、ようやく、仕方ないという感じで作りました。
つまり、基本的には人に頼まれたものを作らない人間なわけです。

しかし、王馬の依頼した発明品はいくつも作っています。
『エレクトハンマー』『エレクトボム』『エグイサルのリモコン』『虫を吸う機械』
これらは確実に一章のカメラより大変なものでしょう。

入間が王馬に脅されていたということはないでしょう。
もし脅されていたのならば、彼女が王馬を殺そうとしたとき脅されていた恨みをぶちまけるはずです。
しかし、彼女はほとんど謝るように言い訳をしながら王馬を殺そうとしました。

これらのことからでも、ある程度の信頼があることはうかがえますが、
・入間が四章で椅子を運ぶの王馬に手伝ってもらっている。(体が小さく力もなさそうな王馬にわざわざ)
・五章の回想で入間は裏切られて…殺されると王馬に弱音を吐いている。(入間は弱気になったりはするが、他の相手に弱音を吐いてはいない)
・入間は、モノクマとは戦わないが勝てたときは「すぐに助けに来てね?」と頼んでいる。
(王馬が助けに来てくれると思っている。ほかの参加者なら、間違いなく王馬にこんなことは言わない)

これらの描写からも王馬と入間の間には信頼関係があったと思われます。

もっとも、その信頼関係のせいで四章で王馬は入間に狙われてしまうのですが。
(入間の呼び出せるような人間が王馬しかいなかったから)

この二人が王馬の気に入っていただろう参加者です。

キーボと夢野はいじってはいましたが面白いからいじっていただけかと思われます。
ただ、夢野に関しては三章の最後で助けていたので少し気に掛けていたのかも。
もしかすると、この四人はDICEにいたら楽しそうだなと思っていたのかもしれません。
愉快な悪の秘密結社にバカな力持ち、変なものばっかり作る発明家、マジシャン、ポンコツロボットはぴったりなので。


次に嫌いな人間ですが、これは確実に春川でしょう。
王馬は、春川のことをしばしば、ほとんど糾弾のように人殺しと呼び掛けます。
ほかの参加者への悪口は割とすぐに言い返せるものが多いのに、春川に対してだけは絶対に否定できない悪口だけを言います。
多分、人殺しを生業としている彼女は、王馬から見ればコロシアイを仕組んでいるやつと同じくらい嫌悪すべき存在だったのではないでしょうか?
結局、春川のヘイトを貯めまくったせいで五章で彼は失敗してしまうわけですが。


■四章の王馬(捜査裁判以外)


上記の人間関係の考察を踏まえると王馬にとっての四章は地獄だったと思われます。
自分が信頼していた人間を二人も失ってしまったので。

まず、入間とは信頼関係を築いていたからこそ、殺しのターゲットにされてしまいます。
入間が呼び出せるような人間が王馬しかいなかったからです。

入間の殺人計画を先んじて理解した王馬には生き残る為に協力者が必要でした。
そうなったとき、動かせるor動いてくれそうな人間はゴン太しかいません。
つまり、王馬は信頼する二人を犠牲にしない限り四章を生き残れなかったのです。

もちろん、新世界プログラムに行かないという選択肢はあったでしょうが、
電子機器を止めるエレクトハンマーや、エグイサルを操れるリモコンを作れる入間を放置することはできないでしょう。
彼女の犯行計画が分かっている新世界プログラムでケリを付けないと、とんでもない発明品で、どう足掻いても対応不能な殺人計画を作られてしまう可能性が高かったので。

ここで入間に殺されては、コロシアイを止められないので、王馬は二人を犠牲にするしかなかったのでしょう。


■四章の王馬(捜査裁判)


四章捜査の段階で(正確には新世界プログラムから出るときから)彼は五章の計画の下準備を始めます、詳しくは五章のところで記述します。

事件の全容を知っている王馬は四章の裁判を自分の思い通り進ませようとしたが――失敗したと思われます。

失敗の要因は二つ。
・ゴン太が新世界プログラム内の記憶を失ってしまった。
・最原が嘘をついてまで裁判の主導権を握ろうとした。
です。

王馬がどのように裁判を進めようとしていたか……はっきりとは分かりませんが、ヒントはあります。

彼はこの裁判中に
「中には、人を傷つけない為の嘘や、人に優しくしたい為の嘘だってあるのに…嘘ってわかっただけで、そのすべてを否定するなんて…みんな、嘘に騙されるのが下手だよねー!」
と言いました。

多分、彼はこの裁判で人を傷つけない為の嘘=彼からもらえるスキルでもある『優しい嘘』をつくつもりだったんでしょう。

王馬の考えていた流れを予測すると……、

①百田と最原を引き離し、最原が事件解決に必要な情報を確実に得られるよう誘導(相棒を名乗り出て最原を誘導)。

②現実世界の捜査で必要な情報を最原に与えたあとは、事件解決に絶対必要な新世界プログラムのルールが確実に判明するように、春川とモノタロウの新世界プログラムの解析を監視。

③裁判になったら少しずつ、最原に推理をさせる。

④ゴン太がボロを出したら、それを嘘や話術を駆使して、かばいつつも、ゴン太が怪しいとほかの参加者に思わせる。

⑤ゴン太の容疑がほぼ確定した段階で、ゴン太が殺されそうになったところを助けてくれた、助けてくれたゴン太を売るわけにはいかないから、嘘をついて庇っていたと自白する。
この際、ゴン太はクロ回避(自分以外全滅)を目指すために、なんらかの反論をするが、世界が滅びていたため、ほかの参加者を絶望させないために殺した方がいいと思った、という本当の動機は語れないので、王馬との共犯関係を結んだ話ができず、周囲は優しいゴン太が王馬を助けたという流れを信じる。

⑥ある意味、円満な状況で参加者たちがゴン太クロを確定し、王馬は自分の印象を若干上げた状態で五章に進む。

こんな感じの流れだったんじゃないでしょうか?
もちろん、入間とゴン太が死んでいる時点で四章開始前の彼の望んだ展開ではなかったでしょうが……。

一応、裁判の展開には王馬なりの予防線が張ってあって、
彼は裁判の前にクロが同数だった場合、クロがオシオキされるという言質をモノクマから取ってあります。
万が一裁判が上手く進まなかったとしても、『優しい嘘』で最低三人は騙して同数に持っていけると踏んでいたのでしょう。
事件の真相を知っている彼にとって、クロ同数はまったく無駄なルールなので、この言質も上記の王馬が望んでいた裁判展開の推理の補強材料になると思います。

しかし、この流れは、
・ゴン太が新世界プログラム内の記憶を失ってしまった。
・最原が嘘をついてまで裁判の主導権を握ろうとした。
ことによって失敗します。

まず、ゴン太が新世界プログラムでの記憶を失ってしまったせいで「わからない」しか言わなくなり、
ほかの参加者がまったくゴン太を疑わなくなってしまいました。
王馬のほかの参加者の信頼度から考えると、ゴン太自身がボロを出さないと、議論の流れを犯人ゴン太説に向けるには無理です。

更に、途中で最原が嘘をついて、無理矢理議論の主導権を握ります。(王馬がサロンにいなかったと証言する部分)
明らかに最原の発言が嘘だと分かっている白銀ですら最原を信じると言い出します。
これをされると王馬はどうしようもありません。裁判は最原のやりたい放題です。

これでは、裁判でほかの参加者たちが間違ったクロを指摘しなかったとしても、
ゴン太が自分を守ってくれたという『優しい嘘』をつくのは不可能なので、
王馬は投げやりになり、全部自白して裁判を終わらせることにしたのでしょう。

裁判終了後、王馬はゴン太と一緒に死ぬと言っていました。
これは本心でしょう。
たとえコロシアイを台無しにできても、ある意味信頼していた入間やゴン太を助けられないので。
ここに関しては証拠となるような台詞等はありませんが、
オシオキを邪魔したときの結末(ダンガンロンパ2で辺古山のオシオキに乱入した九頭龍も殺されかけたように)を想像できないような人間ではないと思いますので、
安易なことは言わないと思います。

 

■五章

 

五章もまた王馬の予想通りに進まなかった章です。
四章で王馬は新世界プログラムを出るときから最原を相棒にしたいと言っていました。

「キミって使えるよね。」
「だから、バカな百田ちゃんなんかと絡んでないで、オレの友達になりなよ。」
「オレなら…キミの力になれるはずだよ?」
「キミがみんなを救えるように、オレが力を貸してあげる。」
「ほら、みんなを救いたいんでしょ?」
「にしし…振られちゃったか。でも、そう簡単には諦めないよ。」
「オレって…好きになった人は、首を絞めてでも振り向かせちゃうタイプなんだよね。」

どうして、これで説得できると思ったんだ? という台詞ではありますが……。それはさておき。
王馬の、最原を相棒にしたいというのは言っているだけで、ストーリーにまったく絡んでいません。
つまり、最原を仲間にしたかったけど、できなくなった理由があると思われます。
それは、五章のトリックに絡めて考えると見えてきます。

多分、王馬は五章での共犯者を最原にしたかったのでしょう。

もし、王馬が百田ではなく最原を五章での協力者にできていたら、彼の作戦は高確率で成功していたでしょう。
キーボ、夢野、春川、百田、白銀で五章の裁判を乗り切れないだろうし。
最原なら、ほかの参加者を騙すことも難しくなかったでしょうし。

ちなみに、四章時点では五章で行われたトリックの詳細は決まっていなかったと思います。
サイバーな中庭が開放されていなかったので。
ただ、被害者不明、犯人不明、などの状況を作ろうとは思っていたと思います。

しかし、王馬は四章での裁判で失敗し印象が悪くなり、最原を自発的な共犯者にすることがほぼ絶望的になりました。(説得が下手すぎるってのもありますが……)

それでも、最原を脅して共犯者にすることはまだ可能でした。

「オレって…好きになった人は、首を絞めてでも振り向かせちゃうタイプなんだよね。」

実際、脅して共犯者にすることを考えていたと思われる台詞もあります。

しかし、四章の裁判後に王馬の判断を狂わせることが、また起きます。
百田の病気が確定的になってしまったのです。

王馬の五章での共犯者計画の穴は、裁判で犯行の全容を解明できなくても、割と高い確率で真犯人に辿り付いてしまうことです。
どんな計画を練ったところで、1/7で真犯人が当たってしまいます。
更に、絶対に犯行が不可能な人間がいたりすると、真犯人を当てられる確率が高くなります。
つまり、そのぐらいの可能性で共犯者がクロになってオシオキされるだけで終わってしまう計画だったのです。
ゴン太と入間を犠牲にしてしまった以上、王馬はそれでもやり遂げる心づもりだったと思いますが……。

ここで、百田の病気が効いてきます。
彼は百田の病気が分かったことで最原を共犯者にすることを完全に諦め、百田を共犯者にすることにしたと思われます。
これならば、真犯人を当てられても、いずれ死ぬ百田が犠牲になるだけなので。
もちろん、彼の計画が成功する確率は下がりますが、失敗したときのダメージを減らせるならと、百田を共犯者にしたのではないでしょうか?

ただ、ほかの参加者が病気だった場合はさすがに共犯者に選ばなかったと思います。
夢野は失敗しそうだし、春川は懐柔できなさそうだし、白銀は未知数。
(キーボはそもそも病気にならない)
宇宙飛行士の訓練生で基礎スペックが高そうな百田だったからこそ、というのはあると思います。

しかし、ヘイトを貯めまくっていた春川が好いていた百田を共犯者にしてしまったことで、
彼は五章での作戦も失敗してしまいます。

仲良くした相手には殺されかけ、仲良くしなかった相手にも殺されかける。
自業自得な面が大きいとはいえ、若干可哀想な気もします。


■さいごに


結局、王馬は四章でも五章でも、色々と上手くいかず、失敗してしまいましたが、
失敗したからこそ、六章で生き残った最原たちがコロシアイを終わらせられたのだと思います。

王馬がコロシアイの裏をかいたところで、外の世界は「へーそうだんったんだ、面白い!」で終わらせていたでしょうし。

 

■補足


コメントを頂いたので何点か追加で意見を……

・いいこではないと思います。しかし、情に厚いとは思います。
動機ビデオの内容を見る限り、酷い目に遭っている仲間のために殺人を犯して外に出る可能性が濃厚なぐらいには情に厚いです。
V3の動機ビデオは黒幕が植え付けた記憶に合わせて作られているので、東条と同じぐらいには王馬も揺さぶられていたと思います。(無印よりもクリティカル)
王馬には殺人を嫌うという信条があり、東条は依頼のためには手段を選ばないという方向性があったため、二人の行動に差が出たのでしょう。
ただ、笑えるとはいえ、犯罪組織の長なので悪い奴です。

・首謀者を乗っ取ろうとはしていなかったと思います。
王馬は4章で最原を誘っている時点ですでに、首謀者のその先である視聴者を意識して行動しています(と私は推測しています、上記の会話参照)。
被害者不明、犯人不明なだけでは、首謀者は困りません。
首謀者は視聴者にアンフェアな行動を指摘されることに困るのです。
ですので、王馬は4章のあの時点から首謀者のアンフェアさを視聴者に見せることを目的に行動していたと思われます。